<詩作品>
生きている声
確かに聞こえた
瓦礫の下から
生きている声
うめく声
人と機械を持ってくる!
もうちょっとだ!
がんばれ!
救助員は叫んだ
3・11
14:46 地震発生マグニチュード九・〇
請戸地区一四メートル津波発生
15:00 原発全電源喪失
19:03 原子力緊急事態宣言発令
21:23 原発三キロ圏内に避難指示
翌5:44 避難指示区域一〇キロに拡大
救助隊は準備を整えた
さあ出発するぞ!
そのとき出された
町民全員避難命令
うめき声を耳に残し
目に焼き付いた瓦礫から伸びた指先
そのまま逃げねばならぬ救助員の地獄
助けを待ち焦がれ絶望の果て
命のともしびを消していった人びとの地獄
請戸地区津波犠牲者一八〇人余の地獄
それにつながる人々の地獄
放射能噴出がもたらした捜索不可能の地獄
果てしなく祈り続けても届かぬ地獄
脳裏にこびりついた地獄絵
幾たび命芽生える春がめぐり来ようとも
末代まで消えぬ地獄
奪われた故郷
コメ作りと近海漁業だけだった
新幹線も高速道路もなかったふるさとに
世界に誇る原発がきた
原発勤務を地場産業にして豊かな街に
大型体育館を作りましょう
道路をきれいにしましょう
観光見学コースにバスが連なりますよ
船主には一億円でどうでしょう
乗り子には五千万円でしょうね
赤瓦の豪邸が立ち並びますよ
原子炉は五重の頑丈な壁で覆われています
他県の原発見学プランに参加を
安全が福島原発の売りです!
素朴で素直すぎる風土をとくと見越して
隣町にも原発誘致の話が来た
東北の電力会社から
誘致は頓挫した
人々は噂した
「口がうまい東京の人に乗せられた町
口下手な東北の人が乗せられなかった町」
今、わかった、東京の人の言ったこと
安全ならなぜ五重の壁が必要だったのか
二〇年続けられた原発マネーは呼び水だったのか
うわさの一億円は
ふるさと放棄と核廃棄場所設置の代償だったのか
大災害に遭ったことのない素朴すぎた田舎者が
疑うことを知らずのせられた大罪
やっぱり東京の人は口がうまかった
口がうまかった東京の人
いや、東京電力の人